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前立腺がんのお話(泌尿器科:中津裕臣)

国内外の著名人がかかったことでよく知られるようになった前立腺がんですが、最近は前立腺検診を導入する自治体も増えるなど、私たちにとっても身近な病気になってきました。ここでは、前立腺がんがどのような病気で、早期発見の為にはどうしたらよいか、についてお話したいと思います。

前立腺って何?

前立腺は精液の一部を作る生殖器官です。もちろん男性にしかありません。正常な前立腺の大きさはクルミの実くらいです。おしっこの出が悪くなる前立腺肥大症という病気がありますが、本来前立腺は排尿の邪魔をすることはありません。

図のように前立腺は膀胱の出口のところにあり、尿道を取り巻いているため、腫れてくると尿が出にくくなることがあるのです。前立腺肥大症も前立腺がんも、50歳以後に発生し年齢とともに罹患率が高くなるため、高齢者の病気といえます。両方が合併することもありますが、もともとは全く別の病気です。

ますます増加する前立腺がん

前立腺がんは、世界でも発生率が最も多いがんになりつつあります。もともと欧米諸国では多い病気で、米国ではすでに男性がんの発生率で第1位となっています。今まで日本やアジア諸国では比較的少ないとされていましたが、近年急速に増加してきており、日本では最近5年間で発生率が約 1.7倍に増えました。

その原因として、平均寿命が延び長生きする人が増えたこと、食事などの生活様式が欧米化してきたことが指摘されています。実際ハワイや米国に住む日系人は、日本国内に住む日本人の4倍くらい前立腺癌の発生率が高いといわれています。また、診断技術が向上して早期がんを発見できるようになったことも、前立腺がん増加の一因です。将来は欧米と同様に発生率、死亡率がさらに高くなると予測されており、大きな社会問題となっていくでしょう。

骨に転移しやすい

正常の前立腺が男性ホルモンによって成長し、活動するのと同様に、前立腺がんも男性ホルモンの働きで発生、進行すると言われています。がんはやがて前立腺を越え、膀胱や尿道など周囲の臓器へ拡がっていきます。また、血液やリンパ液の流れに沿って離れた臓器へも転移していきます。

最も転移しやすいのはリンパ節や骨です。しかし進行は他のがんに比べて非常に遅いことが多く、発生から発病までなんと20〜30年もかかるといわれています。とはいっても油断は禁物です。初期には殆ど症状がなく、排尿困難や血尿などの症状が出たときにはすでに進行がんになっていることもあります。また転移した骨の痛みや骨折によって初めて気づく場合もあります。自覚症状が出る前に早期発見することが大切です。

治療技術も向上

早期の前立腺がんでは手術療法(根治的前立腺全摘出術)や放射線療法によって完治させることができます。治療によって精液を作る機能や勃起能力が失われてしまいますが、前立腺近くの神経を温存して勃起能を維持できる術式や、お腹を殆ど切らずに内視鏡で前立腺を摘出する術式など、手術法も次々と改善されています。また最近では前立腺の内部だけに放射線を照射する治療や、超音波を使った新しい治療法も開発されています。

このように前立腺がんに対する治療は患者さんにとってますます負担の少ない、安全性の高いものになりつつあります。

がんの進行具合や、年齢、合併症などの状況によっては、男性ホルモンの作用を遮断する内分泌療法が行われます。もともと男性ホルモンと前立腺がんの進行には密接な関係があり、この治療は非常に有効です。

内分泌療法はずっと続けていく必要がありますが、数年後に効かなくなる可能性があり、これが問題です。男性ホルモンを除去するためには、両方の睾丸を摘出しますが、注射でも同じ効果が得られます。注射は1ヶ月に1回でいいのですが、最近3ヶ月に1回のものも開発されました。またこれらの治療に内服薬(抗男性ホルモン剤)を併用することもあります。

早期発見のために

進行すればなかなか治り難い前立腺がん、何よりも早期にがんを発見し治療することが、この病気を克服する秘訣です。がんの早期発見に役立つ検査としては、泌尿器科専門医による直腸診(指での診察)、経直腸超音波断層法(エコー検査)とともに、前立腺特異抗原(PSA)があります。特にPSAは採血するだけで簡単に検査できます。

検査値が高ければがんの確率が高いですが、前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇することがありますので、PSA だけでがんを断定することはできません。がんの可能性が疑われた場合は、前立腺の組織を採取する針生検を行って診断を確定します。

最近では当院の人間ドックや自治体の検診でもPSA測定を取り入れてきていますので、どうぞご利用ください。また、PSAは結果がわかるのに通常数日かかるため、多くの医療機関では後日再診していただいて、結果を説明しますが、当院泌尿器科では検査室の協力の下に当日結果を御説明できるようにしております(約1時間でわかります)。初診した日に診断出来ますので、遠方からいらっしゃった方にも便利です。

米国では健康のバロメーターとして、血圧と同じように自身のPSA値を覚えている男性も多いそうです。ぜひみなさんもご自分のPSA値を知って、前立腺がんを早く見つけましょう。女性の方も、みなさんの大切なお父さんや御主人のために気をつけてあげましょう。