神経精神科日誌
本と花と、飯塚先生の思い出
故飯塚登先生がお好きだったまんがの本をデイケアに譲ってくださると、夫人から連絡をいただき、ご自宅に伺いました。
先生の書斎に入ると、天井まで届く書棚にはびっしりと書籍が詰まっていました。まんがだけではなく、古典をはじめとしたたくさんの文学作品、植物学や動物行動学など幅広い分野の専門書がそろっていて、びっくりしてしまいました。 夫人は、早春の花が咲くお庭にも私たちを案内してくださいました。手入れの行き届いた鉢植えの数々が、これからたくさんの花を咲かせる準備をしているところで、とても素敵でした。
夫人によれば、飯塚先生は「本と花の虫」だったとのこと。 読書家を指す「本の虫」という言葉を、久しぶりに聞いた気がしました。
先生のようにたくさんの信頼を集める人であるためには、読書で幅広い見識を得たり、自然とのふれあいを大切にしたり、日頃から脳の前頭前野を鍛えることが大事なのかと私は感じました。
様々なものがデジタル化される現代、前頭前野の使いどころが減り、紙の本を読む集中力も、草花を世話する思いやりも、失いかけているのかもしれません。
私も飯塚先生には及びませんが、紙の本の読書と庭の芝生の手入れを続けていこうと心ひそかに誓いました。
2023.03.22公開