HIV/エイズ診療
診療の背景
当院では、まだ全国的にも診療体制が整っていなかった1987年からHIV/エイズ診療を行なってまいりました。エイズ診療拠点病院の制度が実施された平成7年に、県立東金病院とともに千葉県で最初の拠点病院となりました。以後、専門病院や専門家と連携しながら数多くの経験を重ねてまいりました。
これまで千葉県東部地域および茨城県鹿島行方地域の各医療機関からの紹介を含め、総受診者数は200名を越え、新規患者さんは年間10~20名です。診療体制はまだ発展途上中でありますが、医師、看護師、薬剤師、社会福祉士等が協力し、よりよい療養ができるよう努力しています。
総合的な診療は内科で行なっておりますが、歯科治療、救急疾患、手術、出産、緩和ケアの経験も豊富です。病状に応じ外来・入院とも全科で対応しています。HIV抗原・抗体スクリーニング検査と確認検査、CD4値測定、HIVウイルス量測定は院内で迅速に行なうことができます。
スタッフ
- 中村朗
(内科医師、日本内科学会認定内科専門医、日本エイズ学会会員) - その他、専任看護師、専任薬剤師、社会福祉士
初めて受診される方へ
他院または健康福祉センターでHIV陽性が判明し、当院での診療を希望される場合には、電話にて外来受診日を決めることができますので中村または医療連携福祉相談室へご連絡ください。
外来診療日は月曜日午前または水曜日午後となります。
治療
毎年改定される欧米、日本のガイドラインに沿った治療を行っています。
日本国内で使用可能な抗薬と日和見感染症治療薬はすべて使用可能です。国内での入手が不可能な薬剤が必要な場合には、厚生省エイズ治療薬研究班より供給を受けています。学会、研究会などへの積極的参加により、最先端の知識、治療を行えるよう心がけております。
C型肝炎合併例ではインターフェロン療法も行っております。専門病院への紹介や相談は、ご要望に応じ適宜行なっております。他院からの紹介・転院も随時受け付けています。急病の際には救命救急センターへの受診が常時可能です。
制度の活用
エイズの治療は保険証をお持ちの方であれば保険診療が可能ですが、それでも内服治療や日和見感染の治療には高額の医療費がかかります。
これに対し医療費が減額になる制度(身体障害者手帳取得後の自立支援医療の申請)があります。
詳しい説明は医療連携福祉相談室で経験豊富な社会福祉士が行います。また、医療費以外の様々なお悩みにつきましても、ご相談をお受けいたしております。プライバシーは守られますので遠慮なくご相談下さい。
他医療機関との診療連携
千葉県では定期的にHIV中核病院拠点会議が開催され千葉大学付属病院感染症管理部の専門医師や千葉県内のHIV/エイズ拠点病院医師と密に連携をとりお互いに診療の質の向上をはかっています。
HIV感染が心配な方へ
ご希望の方にはHIV抗体検査を随時行っています。症状がある場合は保険で検査が可能です。検査は血液を少量採らせていただくだけです。HIV抗体検査のご希望は内科外来でお受けいただけます。確認検査を含め1~2日で結果をお知らせできます。ただし、感染する出来事があってから抗体検査が陽性となるまでは1~2ヶ月程度かかります。一度の検査が陰性であっても2ヶ月以内であった場合には間をあけての再検査をおすすめします。
HIV感染症の注意点
HIVは多くの場合、性行為により感染します。HIVに感染する可能性のある性行為をしたならば、他の性感染症(クラミジア、淋病、梅毒、肝炎、赤痢アメーバなど)にも感染している可能性があります。これらは症状があまりないことが多く、感染していても気付かないことが多いのですが、治療しないでそのままにしておくと、重い合併症を起こすことがありますので、同時に検査することをお勧めします。性感染症の検査も希望される場合、男性でしたら泌尿器科へ、女性でしたら産婦人科へ受診していただくことがあります。HIV抗体検査で陽性という結果が出た場合には、当院もしくは他のHIV専門病院に受診できるよう、責任を持って対応いたします。
HIV感染症は日本では増加の一途をたどっています。性感染症は人を選びません。確実な感染予防(正しいコンドームの使用)をしないで性行為をした方すべてに感染の可能性があります。エイズの治療は進歩し、いったん病状が悪化した方でも多くは回復が可能となりました。それでも治療には少なからず困難を伴い、しかも現在の治療法ではHIVを抑えることはできても完全に消失させることはできません。最も大事なのはHIVに感染しないことです。しかしもしかかったとしても、悪化する前に感染を発見し適切な時期に治療を始めれば、現在の健康状態と社会生活を維持できます。ぜひ抗体検査をお受け下さい。なお、HIV抗体検査は地域の健康福祉センターでも無料匿名で受けることができます。詳しくは健康福祉センター(保健所)にお問い合わせ下さい。
当院では性感染症、HIV感染症の蔓延を防ぐべく健康福祉センターと連携して中学校、高等学校での教育、市民健康講座でのHIV感染症防止の啓発、定例勉強会などを行っております。
関連医学情報
- HIV感染症を知る (内科 中村朗)