2011年度

2011年度救命救急センター診療実績について

救急受診者は5 万9 千9 百人を超える(2011 年度)
旭中央病院救命救急センター長伊良部徳次
2011年度(2011年4月1日―2012年3月31日)の救命救急センター診療実績がまとまりましたのでお知らせします。

受診数・入院数等

昨年度の受診数は59,905 人で前年度より3.0%減少し6万人を割り込みました。入院数は6,309 人で、前年度より8.0%増加しました。受診数に対する入院患者の比率(入院率)は10.5%(前年度9.4%)で軽症者の減少、重症者の増加傾向が現れています。入院率は2009年度に初めて10%を切って減少傾向が2年続きましたが増加に転じています。

  07年度 08年度 09年度 10年度 11年度
受診数 62,549
(+1.6%)
61,671
(-1.4%)
65,313
(+5.9%)
61,699
(-5.3%)
59,905
(-3.0%)
入院数 6,312
(+2.9%)
6,179
(-2.1%)
6,237
(+0.9%)
5,845
(-6.3%)
6,309
(+8.0%)
初診患者 23,012
(+3.3%)
22,898
(-0.5%)
24,405
(+6.6%)
23,748
(-2.7%)
交通外傷 1,696
(+7.7%)
1,593
(-6.1%)
1,766
(+10.9%)
1,995
(+11.0%)
1,287
(-35.0%)

紹介数・救急車等

前年度比で、紹介患者数は-12.0%、救急車は-4.5%でした。全受診患者のうち紹介患者の占める比率は4.4%に過ぎません。救急車搬送件数は前年比-4.5%です。これまでずっと増加基調で推移してきましたが初めて減少しています。当院のベッド状況からすれば救急車受入れは限界かもしれません。

  07年度 08年度 09年度 10年度 11年度
紹介患者 3,144
(+3.5%)
3,086
(-1.8%)
3,206
(+3.9%)
2,984
(-7.0%)
2,634
(-12.0)
救急車 5,798
(+1.4%)
6,085
(+5.0%)
6,331
(+4.0%)
6,721
(+6.2%)
6,420
(-4.5)

診療科別受診数と入院数

内科34.6%(前年度34.1%)、小児科26.9%(前年度25.3%)で二診療科で61.5%(前年度59.4%)に達しています。当院は小児救急拠点病院に指定されているために、小児救急患者数は高い水準で推移しており、11年度小児科入院数は前年度比+26.1%の884人(前年度701人)でした。表に示すごとく、全ての救急患者をいつでも受け入れる当院救命救急センターは全ての診療科の協力なしには運営が成り立たないことは明白です(カッコ内は前年実績)。

診断科 受診数 入院数
内科 20,752(21,022) 3,302(3,103)
小児科 16,135(15,631) 884(701)
新生児 30(36) 30(36)
精神科 702(898) 93(69)
皮膚科 2,140(2,288) 20(20)
外科 1,658(1,976) 538(479)
整形外科 5,187(5,555) 295(284)
脳外科 2,672(3,097) 496(524)
泌尿器科 1,754(1,774) 153(120)
心臓外科 32(58) 3(4)
眼科 1,242(1,259) 15(15)
耳鼻科 2,845(3,175) 56(80)
歯口科 820(694) 10(12)
産婦人科 1,277(1,323) 170(184)
透析科 393(388) 202(178)
麻酔科 14(18) 0(1)
放射線科 0(0) 0(0)
形成外科 2,252(2,507) 42(35)
リハビリ科 0(0) 0(0)
合計 59,905(61,699) 6,309(5,845)

患者の地域別比率

地域別では、地元旭市は33.8%(前年度34.0%)でした。茨城県南部は11.6%(前年度11.8%)でした。周辺医療機関で医師が減少していますので、周辺自治体の居住者の比率は依然として高くなっています。銚子市の実患者数は7,766人(前年度12.2%)です。

  07年度 08年度 09年度 10年度 11年度
旭市 34 33.9 33.9 34.0 33.8
香取 16 15.0 15.2 14.4 15.0
匝瑳 11 10.5 10.4 10.5 10.6
東金・山武 11 11.5 11.6 12.2 12.0
鹿嶋・神栖 12 12.1 12.1 11.8 11.6
銚子 11 11.8 11.9 12.2 12.4
その他 5 5.2 4.9 4.9 4.6

年齢構成

年齢構成を見ると、受診数に占める比率は10歳未満が29.4%、次いで70歳代が10.6%を占めます。入院数に占める比率は10歳未満は05年度14.3%、06年度17.8%、07年度20.1%、 08年度18.0%、09年度16.9%、10年度12.4%、11年度14.2%でした。60歳代―80歳代で05年度51%、06年度52.5%、07年度52.5%、08年度53.4%、09年度54.7%、10年度56.6%、11年度56.9%でした。入院患者は若年者の比率は徐々に低下して高齢者の比率が増加しています。
受診した患者さんのうちで入院した割合(入院率)は年代とともに上昇し、70歳代で20.3%、80歳代で25.1%、90歳以上では28.5%の方が入院しています。激しい高齢化の波が押し寄せているのが見て取れます。カッコ内は前年度実績です。

 

  受診数 比率(%) 入院数 比率(%) 年代別入院率(%)
〜10歳 17,615 29.4(28.8) 898 14.2(12.4) 5.1(4.1)
10歳代 4,638 7.7(7.3) 155 2.5(2.7) 3.3(3.6)
20歳代 4,912 8.2(8.5) 193 3.1(5.6) 3.9(6.2)
30歳代 5,271 8.8(8.9) 393 6.2(5.2) 7.5(5.5)
40歳代 4,011 6.7(6.7) 342 5.4(5.8) 8.5(8.2)
50歳代 4,869 8.1(8.3) 575 9.1(10.2) 11.8(11.6)
60歳代 6,313 10.5(10.5) 1,059 16.8(15.4) 16.8(13.9)
70歳代 6,369 10.6(11.6) 1,294 20.5(21.9) 20.3(17.9)
80歳代 4,940 8.2(8.1) 1,238 19.6(19.3) 25.1(25.9)
90歳以上 967 1.6(1.4) 276 4.4(3.5) 28.5(23.8)

香取・海匝地域救急医療コーディネート事業

千葉県は2009年7月から当地域の救急医療コーディネート事業をスタートさせました。この地域で救急受入れ困難事例が多発していることを改善することが目的です。香取・海匝医療圏の参加協力病院の空床状況と当直医の診療科、受入れ可能な診療科目を毎日旭中央病院に集約して、その情報を各病院と消防本部に情報提供して救急受入れ困難事例は旭中央病院が必ず受け入れることとしました。その目的を達成するために当院は救急コーディネートベッドとして救命救急センター内に4床のベッドを午後5:00には確保して対応してきました。しかしベッドが不足しているために2011年5月の新館開設を機に救命救急センター病床30床のうち15床をコーディネートベッドに指定して夜間入院した患者は翌日には院内外に転出することでベッドを回転させています。千葉県のコーディネート事業は午後7:00−午前7:00の救急車搬送のみですが、当院はコーディネートベッドを救急車に限定せず、午後5:00−午前8:30の運用としています。コーディネートベッドへの収容状況は示すとおりです。コーディネートベッドを増床した2011年度は月に平均58人(前年度18人)が収容されています。

千葉県救急コーディネート事業対象(19:00−7:00 救急車搬送)
消防名 山武 香取 銚子 匝瑳 鹿嶋 成田 合計
4月 5(9) 0(2) 4(2) 2(1) 5(5) 0(0) 0(0)   16(19)
5月 13(4) 0(0) 10(3) 7(4) 11(3) 4(0) 0(0)   45(14)
6月 21(7) 5(2) 11(5) 8(4) 8(2) 2(2) 0(0)   55(22)
7月 21(1) 2(1) 8(3) 6(0) 6(5) 1(2) 0(0) 八街1 47(12)
8月 19(8) 8(5) 7(7) 6(4) 12(3) 9(2) 0(0)   61(29)
9月 15(7) 9(2) 11(4) 5(5) 11(1) 4(0) 2(0)   57(19)
10月 28(4) 6(5) 8(6) 6(1) 11(0) 3(0) 0(0)   62(16)
11月 12(4) 6(2) 6(1) 5(2) 12(4) 7(1) 1(0)   49(14)
12月 23(4) 5(3) 9(2) 12(0) 15(3) 7(6) 0(0)   71(12)
1月 26(1) 3(1) 18(3) 9(1) 17(2) 7(2) 1(0)   81(10)
2月 18(3) 6(1) 12(4) 13(3) 17(2) 7(0) 1(0)   79(13)
3月 18(8) 4(2) 10(5) 10(2) 18(5) 6(2) 0(0) 長生1 67(24)
合計 224 (60) 54 (26) 114 (45) 91 (27) 143 (35) 5 (11) 5 (0) 2 690 (204)

救急車受入れ困難事例とセンター外来からの転出搬送

昨年1年間の救急車受入れは6,420件(昨年度比-4.5%)でした。満床、手術室満室がその主な理由です。救急車の受入れ困難事例の多発は救急隊の深刻なストレス要因となっています。救急隊と病院の信頼関係にも影を落としていることは容易に想像がつきます。周辺病院は体力が低下したままです。救急医療は平常診療の延長線上にあり、救急医療のみが特別に存在する訳ではありません。従って当地域の休日、夜間の救急医療体制はきわめて厳しい状況が今後も続きます。当院が満床の場合、平日の日勤帯には近隣病院に転院搬送せざるを得ません。夜間や休日はコーディネートベッドや入院予約ベッドに一旦収容してから平日の日勤帯に近隣病院へ転送しています。救急外来からの直接転院搬送は1年間で100件前後(昨年85件)に上ります。地域の救急医療を取り巻く環境は依然として厳しく改善の方策は見つからないままです。

地域医療再生プログラムと旭中央病院地域医療支援センター

2011年度から国・県による地域医療再生プログラムが香取・海匝地域医療圏でスタートしました。当院を核とした地域医療再生支援事業が千葉大学等と協力しながら進められています。千葉大学から3人の常勤医が当院に設置された地域医療支援センター経由で赴任し、1名は地域の病院へ派遣されました。当院から派遣される医師1名と合わせて2名が地域の病院で活躍することになっています。また非常勤医師2名も千葉大学から派遣されています。地域医療センターは事務局機能、施設、設備ともに揃い、またシミュレーションセンターも稼動しています。今後地域の医療人材の育成に大いに貢献することが期待されています。再生の第一条件は医師の確保です。近隣病院の医師確保に力を入れながらネットワークを構築して力強い救急医療体制を是非とも築き上げたいものです。

特例病床と救急

当地域の医療再生のために厚生労働省は当院に特例病床として33床(救急10、がん21、循環器2)の増設を許可しました。33床は前記3疾病ごとにベッドが特定されています。そのベッドに該当する患者が入院しているかモニターしていますが適正性は95%前後で推移しており概ね適切に運用されていることが確認されています。特例病床33床は一般病床760床の4.3%に相当します。昨年の救急からの入院は前年度比で+8.0%増加(464人)ですので焼け石に水といった状態です。

救命救急センターの課題

自治体病院は地域の中核病院として機能してきました。しかしながらその中核を担ってきた300床規模の病院が次々と危機にさらされています。「300床クライシス」です。その「300床クライシス」は今や救命救急センターを併設する500床規模の病院に拡大して「500床クライシス」の様相を呈してきました。 本年度は本館完成とともに救命救急センターは本館に移転し、施設、設備ともに格段に充実しました。しかしながら2012年度は救急救命科医師が大学への復帰等で減員となります。幸いなことに非常勤ながら当院を継続して支えて頂く事になっています。また千葉大学の支援も得ることが出来ています。内科医の補充が充分でなかったこともあり、救急を支えるマンパワーが一時的に減ります。人材の確保・育成と救命救急センターのあり方などを検討して地域救急医療の砦としての役割りをしっかり果たしたいと思います。