近年MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、セラチアをはじめとする院内感染が問題となっていますが、当院では昭和60年4月より院内感染対策委員会を設置し院内感染の予防に努めています。
院内感染対策は病院職員が一丸となって感染予防に取り組むものであり、病院全ての部署について適用するものです。委員会は病院長、院長補佐(委員長)、内科医師、小児科医師、婦長、整備課長、薬剤師、細菌検査室技師、放射線科技師と各病棟の看護婦よりなるリンクナースより構成され、月1回会合を開いています。委員会で決定した事項はナースリンクにより各病棟に伝達、指導されます。また、委員会内に分野別のスモールグループを設置し、「普遍的予防措置」「血管カテーテル」「尿道留置カテーテル」「院内気道感染」「手術部位感染」「医療器具の滅菌と消毒」などの感染対策を強化しています。さらに、昨年度は医師2名がインフェクションコントロールドクターの資格を取得し、実のある感染対策を行っています。
院内感染対策委員会の活動内容は以下のとおりです。
当院では院内感染対策の基本としての「衛生学的手洗い」を重視し、全病棟の看護婦、研修医には模擬手洗いによる教育を年間を通じて行っています。また、床の粘着マット、予防着の過剰な着用、消毒薬の噴霧、紫外線殺菌灯による予防着滅菌など過去に行われてきた医学的根拠の乏しい感染対策は廃止しております。耐性菌を増やさないためには抗生剤の適正使用が必須ですが、院外からも感染症専門医を招き毎月医師への講習を行っています。
ちなみに、院内感染で代表格のMRSAについてですが、当院における黄色ブドウ球菌中でのMRSAの割合は45%〜50%です。一時期は60%近くまで増加しましたが、様々な感染対策で再び減少いたしました。日本では300床以上の病院でのMRSA分離頻度が平均70%と極めて高い中、低い数字に抑えられています。しかし、これらの数字はアメリカでは40%、イギリスで20%とさらに低く、私どももこれに近づくべく院内感染対策に努めてまいりたいと考えております。